「観月さんは私の大切な人。彼氏だよ。」
--- はじめ ・ 後 ---
の言葉に幸せそうに笑った観月を睨みつけて、赤也は言った。
「俺、認めないっスよ。」
「え?」
「先輩に、こんなヤツは相応しくないっス。」
「・・・赤也?」
「おやおや。酷い言われようですね。」
「先輩はテニスの強い人が好きだって言ったじゃないっスか!」
「そうなんですか?」
「そういえば、言った気がします。
でも、赤也。観月さんもとってもテニスが上手なのよ。」
「でも、俺の方がその人より上手いっスよ!!」
いきり立つ赤也に、は困惑し、観月は相変わらず笑みを浮かべる。
「観月さん、あんたムカツクんすよ。」
一段低い声でそう言った赤也に、が眉を上げる。
「ちょっと赤也!なんて事言うの?!」
「先輩は黙ってて下さい。
観月さん、あんた本当に先輩のこと好きなんスか?」
「ええ。好きですよ。」
「そのわりには、余裕じゃないっスか。」
「焦る理由などありませんからね。僕たちはうまくいっています。」
「俺は同じ学校で同じ部活なんスよ?」
「それが何か?」
「あんたよりも、ずっと先輩と一緒にいられる。」
赤也の言葉に観月はほんの少し、誰も気付かない程度表情を動かした。
別の学校だというリスクは承知していたはずだ。動揺するようなことではない。
自分もまだまだですね。などど、どこかのルーキーのような台詞を心の中で思いながら観月はサラリと毒を吐く。
「時間など関係ありませんよ。どのような内容の時を過ごしたのか。それが大事でしょう?」
2人の会話をはハラハラしながら聞いている。
「ッ!とにかく、俺はあんたを認めないからな!」
「ご自由に。」
涼しい顔で観月が言う。自分など眼中にない。と言わんばかりの観月の態度に赤也はイライラとする。
「あんた・・・確か青学の不二に負けたよな?それも、こっぴどく。」
赤也か思い出したように言うと、観月はピクリと眉を上げた。
「俺、これからその不二と試合なんスよ。」
「・・・そうですか。」
「俺が不二を倒したら、あんたより俺のがテニスが強いってことになるよな?」
「君が不二周助に勝てるとは到底思えません。」
観月がそう言うと、がキッと彼を見る。
「いくら観月さんでも、今の言葉は聞き捨てなりません。訂正して下さい。」
「先輩。」
顔を輝かせて愛しい彼女の名を呼ぶ赤也を、観月はやはり余裕の笑みを浮かべて見る。
が赤也の味方をすることは、彼女の性格上分かっていた。
だから、反論されても動揺はしない。
しかし、の反感を買うのを分かっていて、口にしてしまったのは観月のミスだ。
このままでは、赤也がつけ上がってしまう。
単純な彼は、が彼氏である観月に反論してまで自分を庇ってくれたことを、特別だと認識するだろう。
案の定、赤也は勝ち誇った顔をしで観月に言った。
「やっぱり、あんたは先輩に相応しくない。俺がもらいますよ。」
ほら。やはり、そうきましたか。
観月は自分の思ったとおりの展開におもしろくなさそうな顔をする。
のことを、好きになる奴が出てくるであろうことは分かっていた。
自分が好きになるくらい素敵な女性だ。他の男が放っておくはずがない。
それは分かっていた。
しかし ―――
実際に目の前に現れるとおもしろいものではない。
しかも、真田や幸村ならともかく、こんな生意気な1年に。
イライラとした気持ちが広がっていくのを抑えきれないまま、赤也へと視線を投げる途中で突然の告白に驚いているの姿が目に入った。
観月のこととなると、どれほど誤魔化してもすぐに体調不良など見極めるというのに、自分のこととなると とても鈍感な彼女。
きっと今、頭の中はパニックを起こしていることだろう。
そんなの心境を読み取って、観月はクスリと笑う。
とても可愛い。
彼女だけは、誰にも渡すつもりは無い。
彼女を視界に捕らえただけで、不思議と気持ちは落ち着いていた。
「僕はと別れるつもりはありませんよ。もちろん彼女もそうだと思います。ね??」
観月の言葉にが頷くと、赤也は叫ぶように言う。
「先輩は優しいから嫌だとは言えないんだよ。そうっスよね?先輩。」
「赤也・・・」
「そうだ。こうしましょう。俺が不二に勝ったら、あんた先輩から手を引いてよ。
本当にテニスの強い方が先輩の彼氏に相応しいんだ。」
「ちょっ!赤也?!」
常軌を逸した後輩の発言に、は慌てる。
「僕はを何かの賞品のように扱うつもりはありません。彼女に失礼なことを言わないで下さい。」
の気持ちなど全く考えずに、自分の気持ちだけを押し付けようとする赤也に静かな怒りがこみ上げてくる。
こんなヤツがを好きだと言うこと事態が気に入らない。
先ほどまでの笑みを完全に消し去った観月は、赤也へと冷ややかな視線を送った。
しかし、赤也はそんな観月の変化など気にも止めず挑発するように言葉を続けた。
「はっ。偉そうなこと言ってるけど観月さん、あんた俺が不二に勝って先輩を取られるのが怖いんだろ?」
「そんなことはありません。不二周助が君に負けるとは思わないし、を賭けに使う気もない。」
赤也が勝つことは無い。
と、言っても今度はは怒らなかった。
観月の自分を思う気持ちが十分すぎるほど伝わってきたからだ。
赤也に対して向けられた観月の怒りは、に横恋慕した事ではない。
の意思を全く無視した、赤也の自分本位な姿勢に対してだ。
それをちゃんと感じ取って、は胸が熱くなる。
赤也の暴走は困ったものだが、彼のおかげで、自分がどれだけ観月に愛されているのかを知る。
こんな時に不謹慎かもしれないが、幸せで心が満たされる。
「観月さん・・・」
が口を開いた時だった。
ジャッカルが赤也を目指して血相をかえて走ってきたと思ったら、緊迫した空気を吹き飛ばす勢いで彼の腕を掴み、
そのまま何も言わず彼を引きずるようにして連れ去ってしまった。
唖然とその光景を見送った観月とは顔を見合わせる。
そして、どちらとはなく時計へと視線を向ける。
「え?もうこんな時間?!」
真田にもらった自由時間はとっくに終わっている。シングルス2の試合開始はすぐそこまで迫っていた。
早く立海側へと戻って、マネージャーの仕事をしなくてならない。
観月と付き合うことを、赤也にも、他の誰にも文句は言わせない。
そのためには、マネージャー業に支障をきたしてはならないのだ。
は離れがたい思いを感じながらも観月へと別れを告げる。
「観月さん。私、行かなくちゃ。」
「ええ、そうですね。お仕事頑張って下さい。」
「あの・・・赤也が迷惑かけてゴメンなさい。それと、有難うございました。」
「え?」
「観月さんが、私のこと、賭けの対象になどしたくない。って言ってくれた時、凄く嬉しかったから・・・」
そう言って、が本当に幸せそうに微笑むと、観月は「当たり前ですよ。」と言いながら 「んふ。」 とお得意の笑みを浮かべた。
観月のその笑い方がは好きだった。
だが、観月がそんな笑い方をする時は要注意だということを忘れていた。
立海のベンチへ戻ろうとするを引き止めて、最後に観月が言った言葉に、は赤也の試合など頭に入らないほど動揺させられることになった。
「。切原くんのことを名前で読んでいるのですね。
でしたら、僕のこともちゃんと はじめ と呼んでくださいね。」
Fin
★ ☆
えーと・・・
赤也との対決が中途半端な感じです(汗)
ま、結果は不二くんの圧勝だったわけで、結局、赤也はマネを手に入れられませんでした。
まぁ、百万が一(笑)不二くんに勝ったとしても、観月さんが彼女を手離すことはないですけどね。
不二好きなとこをここでアピールしてどーするんでしょうか。私。
華林、HappyBirthday。(かなり遅れたけど^^;)
これからも仲良くして下さいね。
from遊月
はいぃっ、ポロリと誕生日だと言ったら書いてくれました!!!
戴きましたよ、ステキなプレゼント〜〜〜っ
物凄い贅沢な設定で、本当にため息がでるほどの鮮やかな展開。
何度読んでも顔がにやけちゃうよ(んふっ)
どうもありがとう、こちらこそよろしくお願いします!だよ。
月夜 風さまのサイト、『LAST ANSWER』には
リンクのページで繋がっていますので、是非!!!